「その違和感を絶対に見逃すな」。岸本鮎佳が語る、 自分の本音で人生を選ぶということ

Index目次

きれいごとでは描けない、人間の“複雑さ”こそが面白い

──脚本を書くとき、人物を描くうえで大切にしていることはありますか?

絶対に嘘になりたくない、ということですね。見た人に「いるいる、こういう人!」と思ってほしいんです。私、わりと嫌な人に出会ってしまうタイプで(笑)。飲み屋で変な人に絡まれたり、アルバイトでもいろいろな人と接してきました。スーパーやバー、葬儀屋など、これまで人と接する仕事をたくさん経験しているんですよね。

バーでは長く働いていて、お酒が入ったときに見えてくる人間関係の生々しさも、たくさん見てきました。そういう経験は全部、人物を書くときにつながっています。「あ、これ、あの人っぽいな」って。

──さまざまなお仕事の中でも、特に印象に残っている経験は?

実は、やってよかったと思うのは葬儀屋の仕事なんです。ご遺族を案内する仕事をしていたんですけど、すごく繊細な場ですよね。誰にでもできる仕事ではなくて、究極の優しさが必要なんじゃないかと思いました。もしこの仕事を辞めることがあったら、また葬儀屋で働いてみたいと思うくらい、印象に残っています。

──岸本さんの作品では、女性同士の友情や、言葉にしづらい感情も丁寧に描かれています。

私には、女性の感情ってすごく多面的で複雑に見えるんです。例えば、女友達のことが嫌いなわけじゃないのに、なぜか嫌な気持ちになることってあるじゃないですか。理由を説明しようとしても、うまく言葉にできなかったり。

でも、女性がその感情に至るまでには、いろいろ考えて、我慢して、という積み重ねがあると思うんです。「なぜこの人は、こういう行動を取ったんだろう」と考えていくと、そこにすごくドラマがある。そこが面白い部分でもあるので、絶対に見逃したくないんです。

──作品に対する価値観も、経験とともに変わりましたか?

すごく変わりました。昔は素直に感動していたものでも、今は「えっ、これって嘘っぽくない?」と思ってしまうことがあって(笑)。ただきれいにまとまるドラマには、あまりしたくないんです。『替え玉ブラヴォー』でも、特に年齢を重ねてからの友情には悩みや複雑さがあるので、そこは嘘をつかずに書くことを大切にしていました。

三谷幸喜さんの作品は、昔からずっと好きです。作家をやっていると、あれだけ幅広い人に届いて、ちゃんと面白くて、しかも品のあるコメディを作ることのすごさがわかるんですよ。人物描写にも信頼感があって、嫌な気持ちにならない。私もそういうコメディを書ける人になりたいです。

Profile

岸本鮎佳

岸本鮎佳

脚本家・演出家・俳優。神奈川県出身。小学生の頃から演劇に親しみ、大学時代に舞台・演技の道へ進むことを決意。俳優として自ら出演の機会を作ろうと脚本執筆、演出にも取り組み、現在は複数の立場から作品づくりに携わる。接客業などで出会った多様な人々をヒントに、日常の人間関係や女性の複雑な感情を描く。『替え玉ブラヴォー』などを手がけ、コメディの可能性を追求している。

BookShelf

おすすめの書籍

星の教室

星の教室

Amazon

楽天ブックス

紀伊國屋書店

セブンネットショッピング

Related

関連記事

Recommend Movies

おすすめの動画

Recommend

おすすめの記事

Tags

おすすめのタグ