「美味しいの原点を探して」幸後綿衣|vol.4 昔ながらの製法が育む、澄んだ旨味。伊勢志摩の鰹節を訪ねて(三重県伊勢市)
「究極の一貫」をつくるために、全国各地の産地を訪ね歩く、東京・麻布十番「鮨 めい乃」店主・幸後綿衣さん。食材や生産者との出会いを通して、一品に宿る物語を紐解いていく連載です。
第四回目にお届けするのは、“鰹節”です。
鰹節は、鰹を煮て、燻しながら乾燥させて作る、日本の伝統的な保存食です。あんなに硬い塊なのに、削るとふわりと舞うほど薄くなる。その変化も、考えてみると面白いですよね。
そして、薄く削ったひと片から、豊かな香りと旨味が広がる。出汁として料理の土台を支えたり、仕上げに添えて風味を引き立てたり。普段は脇役に見えても、一皿の味を左右する、大切な存在なんです。
だからこそ、どんな鰹節を選ぶかにも、料理人の考え方が表れるのだと思います。
綿衣さんの鰹節の旅を、お楽しみください。

伊勢志摩周辺は古くから鰹漁や、その保存・加工法である鰹節づくり(波切節)が非常に盛んな地域
探していたのは、澄んだ味わいの鰹出汁
私は北九州出身で、子どもの頃から親しんできたのは、鰹よりも、いりこなどの魚の出汁でした。母方の祖母が京都の人だったこともあり、家の料理も、比較的あっさりとした味つけだったんです。
私にとって京都の出汁は、昆布の旨味を生かした、やさしい味わい。一方、東京で出合った鰹出汁には、燻した香りや血合いの風味がしっかりと感じられました。お蕎麦のつゆなども、そうですよね。お寿司屋さんで教わるレシピでも、鰹節をたっぷりと使って、濃く引く出汁が基本でした。
私もずっと、そういう鰹出汁を使っていたんです。でも、どこかで「あまり好きではないな」と感じていました。旨味はしっかりしているのに、自分の好みとは少し違う。なぜだろうと考えるうちに、「そういえば、私はこの味で育っていないんだ」と気づいたんです。
そこから、鰹節そのものに目を向けるようになりました。血合いが入っているもの、取り除かれているもの。その割合によっても、出汁の味わいは変わります。
どうやら自分が苦手に感じていたのは、鰹出汁の酸味や、血合いの風味だったのだと思います。それなら、血合いを取り除いた鰹節で出汁を引いたらどうだろう。そう思って探すなかで出合ったのが、伊勢の「かつおの天ぱく」さんでした。
以前、試食する機会があったのですが、とてもクリアできれいな味わいで、私好みのおいしさだと感じました。血合いを残すかどうかは、良し悪しではなく、好みの問題ですよね。一般的には、血合いも旨味の一部と捉えて、残しているところが多いんです。

いくらの出汁漬け。「いくらそのものの繊細な味わいを引き立てたいので、血合いを除いた、すっきりとした鰹出汁に漬けています」

カラスミの茶碗蒸し。余計な雑味のない透明感のある味わい
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