「美味しいの原点を探して」幸後綿衣|vol.4 昔ながらの製法が育む、澄んだ旨味。伊勢志摩の鰹節を訪ねて(三重県伊勢市)
一本の鰹節に注がれる、職人の手間と時間
三重県志摩市にある「かつおの天ぱく」さんは、昔ながらの「手火山(てびやま)製法」を守り続ける、全国でも希少な鰹節の製造元です。江戸時代から受け継がれる製法で、職人が丁寧に仕上げる鰹節は、伊勢神宮にも奉納されています。
志摩と鰹のつながりは、なんと奈良時代から。平城京跡で見つかった木簡にも、鰹の加工品を献上していた記録が残っているそうです。
朝廷に豊かな食材を届ける「御食国(みけつくに)」だった志摩では、鰹は伊勢神宮へのお供え物としても大切にされてきました。
戦国時代には、保存のきく「堅魚(かたうお)」が武士の携帯食に。そして江戸時代に燻す技術が加わると、志摩の波切(なきり)でも鰹節作りが盛んになったのだとか。
いつも何気なく使っている鰹節が、神様へのお供え物にも、武士たちの食事にもなっていたなんて。そんな歴史を知ると、一本の鰹節が、なんだかぐっと奥深いものに見えてきます。
ここの鰹節をぜひ使いたいと思い、伊勢志摩まで伺いました。
「かつおの天ぱく」四代目・天白幸明さんのお話によると、伊勢志摩の風土を生かし、昔ながらの製法を大切にしながら、半年ほどかけて仕上げていくのだそうです。一つひとつの工程を詳しく伺い、一本の鰹節に、本当に気の遠くなるような手間と時間が注がれていることを知りました。半年もの歳月と手間暇をかけて作られる鰹節は、日本の出汁文化を支えてきた食材。鰹節を知ることは、日本食の原点に立ち返ることでもあるのだと思います。

「かつおの天ぱく」鰹いぶし小屋見学は誰でも参加可能。鰹節づくりとその歴史を通じて、伊勢志摩に伝わる食文化と精神性を、職人から学ぶことができる
原料となる鰹にも、とてもこだわっていらっしゃいます。輸入した鰹を使うところもあるなかで、こちらでは近海で獲れた鰹を使っているそうです。どんな原料を選び、どう仕上げるか。その積み重ねが、あの味わいにつながっているんですね。
鰹節は身近な食材ですが、どう作られているのかを知る機会は、意外と少ないですよね。
一つひとつの工程には、腐敗を防ぎ、旨味を凝縮させるための意味がある。実際に現地を訪ねて、その一本を作り上げる職人さんの仕事を知ることができました。
そして何より、手間を惜しまず、真心を込めて作ることは、やはり味にもつながるのだと、改めて感じました。
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