「美味しいの原点を探して」幸後綿衣|vol.2 職人技で削る!「かんぴょうができるまで」(栃木県)
「究極の一貫」をつくるために、全国各地の産地を訪ね歩く、東京・麻布十番「鮨 めい乃」店主・幸後綿衣さん。
食材や生産者との出会いを通して、一品に宿る物語を紐解いていく連載です。
第二回目にお届けするのは、“干瓢(かんぴょう)”。
かんぴょうは、ウリ科の植物「夕顔」の実を細長くむき、乾燥させてつくる日本の伝統的な乾物です。現在、国内で流通する国産かんぴょうのほとんどは栃木県で生産されています。
栃木県が日本一のかんぴょう産地となった背景には、この土地ならではの気候があります。
7〜8月、収穫期を迎える頃の栃木では、夏の風物詩ともいえる夕立や雷雨が頻繁に訪れます。その雨が地表を冷やし、暑さに弱いユウガオの根の生育を助けるだけでなく、開花からわずか2〜3週間で収穫を迎える実(ふくべ)を大きく育てる恵みの雨にもなります。
自然のリズムと土地の気候が見事にかみ合ったことこそ、この地が日本有数のかんぴょう産地として発展してきた理由のひとつなのです。
江戸前寿司では、かんぴょう巻きは古くから親しまれてきた定番の一品。派手さはありませんが、丁寧に炊き上げられたかんぴょうには、素材の持ち味と職人の技術が凝縮されています。一見シンプルだからこそ、ごまかしが利かない。かんぴょうは、江戸前寿司の文化と手仕事を象徴する、大切な食材のひとつ。
今回は、そんなかんぴょうの産地である栃木県を訪れた時の綿衣さんの記録です。
「知っている」と「見たことがある」は違う
料理人は、まず技術を身につけることから始まります。教わったことを繰り返し、自分のものにしていく。でも、それができるようになった先には、「自分なりの答え」を探す時間があるのだと思っています。
私にとって、その答えを探すきっかけになるのが、「これって、そもそも何なんだろう?」という疑問です。
今回の「かんぴょう探訪」は、そんな疑問から始まりました。

昔から親しまれてきた大切なかんぴょう
「かんぴょうって何?」と聞かれて、「夕顔の実を細くむいて乾燥させたもの」と説明はできます。でも、実際にどんなふうにつくられているのか、どんな環境で育ち、どんな工程を経て一本のかんぴょうになるのか、私は見たことがありませんでした。
お店では毎日のようにかんぴょうを炊いています。かんぴょう、大好きなんです。
でも、その日の炊き加減は毎回少しずつ違います。乾物だから状態は一定ではなく、すごく乾いているものもあれば、やわらかいものもある。同じ一本の中でも、チリチリした部分ときれいな部分が混ざっていることもあります。
料理人は、その日の状態を見極めながら炊き方を調整します。それも職人の技術です。でも私は、「なぜ、こんな違いが生まれるんだろう」と思うようになりました。
そしてここ数年、国産かんぴょうの生産量が年々減っているという話も耳にしてきました。寿司業界でも「国産かんぴょうが手に入りにくくなっている」という声を聞くようになり、「このまま、かんぴょうがなくなってしまうのでは」と不安にもなっていたんです。
それならば、一度自分の目で見てみたい。
そう思って訪ねたのが、栃木県の「矢野かんぴょう」に卸している農家さんでした。


毎日使っている食材なのに、私はその原料すら見たことがなかった。だからこそ、実際に畑へ行き、収穫し、むいて、乾かすところまで体験してみたいと思ったんです。
料理人として技術を磨くことももちろん大切です。でも、それと同じくらい、食材を知ること、生産者の方の仕事を知ることも大切だと思っています。
「知っている」と「見たことがある」は、まったく違う。産地へ足を運ぶたびに、そのことを実感しています。
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