児玉美月|女性たちの声と連帯【自分らしく生きるための映画紀行 第6回】
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女性たちの声と連帯
2017年、有名プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインに対する性暴力及びハラスメントの告発を機にハリウッドを中心に広がっていった#MeToo運動は、映画界に大きな影響を与えた。そのワインスタインの告発記事を書いたニューヨーク・タイムズ紙の記者ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーによる回顧録『その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』をもとに映像化された『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022年)は、女性たちが声を上げることや他者と経験を共有することの重要性を語った。
『SHE SAID』は、女性俳優や従業員に対するワインスタインの加害行為がなぜ長年明るみに出なかったのかをジャーナリスティックに描く一方、出産を経て産後うつに苦しむトゥーイーと、仕事と幼い子供のいる家庭との間で葛藤するカンターの私生活にも光を当て、はたらく女性にとって普遍的なドラマを織り込む。それは多くの観客の共感を呼び起こすだけではなく、女性が女性の手を取り、連帯する構図を強調するものでもある。

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(C) 2022 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
かつてワインスタインが経営していた映画会社ミラマックスの元従業員であるローラ・マッデンも、過去に被害を受けていた。マッデンは、「声を上げる。できない女性たちのために。三人の娘たちには虐待やいじめを普通のことと受け止めてほしくない」と果敢にトゥーイーとカンターへ伝える。そこにはマッデンだけではなく、いまを生きる女性たちによる次世代へ受け継がれていくべき願いが重ね合わせられてもいるだろう。原作となった回顧録では、マッデンはこれをメールでふたりに送っているが、映画では乳がんの手術をまさに目前に控えた彼女が涙ながらに電話で話し、劇的な演出が施された。
劇中、加害者であるワインスタインはわずかに後ろ姿が映し出されるに過ぎず、ほとんど声のみでしか存在を現さない。少なくない数の被害者が秘密保持契約によって口外を禁止され、あるいは恥や恐れの意識から沈黙を強いられ、声を奪われていたのに比して、ワインスタインは顔さえ正面から映されなくなってもなお、その声は失われない。あくまでも事実に忠実であろうとする意思に支えられた『SHE SAID』にあって、こうしたいくつかのメールから電話への映画的な改変は、たんにドラマ性を盛り上げるためではなく、彼女たちの「声」の力をより一層響かせるための選択であるようにも感じられる。被害者のひとりである俳優グウィネス・パルトロウは声のみ出演しているが、パルトロウ自身が吹き替えを行い、「声」の真実性を担保している。映画に冠された『SHE SAID』(彼女は語った)というタイトルの通り、彼女たちは声を奪われていたが、まさにその声をもって不正義と闘っていった。

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(C) 2022 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
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