〝一流〟を目指して走り続ける、振付師・槙田紗子が描く未来とは

Index目次

アイドルの夢を捨てきれず、葛藤した日々

――その後グループを卒業され、現在は振付師として活躍されています。その道に進もうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

もともと私は、少し斜めから物事を見てしまうタイプというか、常に俯瞰で考える癖があるんです。自分自身はアイドルとしてステージに立っているのに、「次はこういう曲のほうがいいんじゃないか」「衣装はこうしたらもっと魅力的になるんじゃないか」と、いつもプロデューサー目線で考えているところはありました。

もちろん最初は、芸能の世界でプレイヤーとして売れたいという気持ちがありました。でも活動を続ける中で、「この人たちには敵わないな」と思うような、純粋にプレイヤーとして突出した才能を持つ人たちにもたくさん出会って。

そんな中でライブ演出を任せてもらう機会があって、「もしかしたら自分が本当に力を発揮できるのは、ステージに立つ側ではなく、ステージをつくる側なのかもしれない」と感じるようになったんです。自分の得意なことや役割が、そこで初めてはっきり見えた気がしました。

――葛藤や不安はありませんでしたか?

あった……と思います。というのも、私、過去のことを結構忘れちゃうタイプなんですよ(笑)。でも振り返ると、最初は少し現実から逃げていた部分もあったのかなと思います。最初に目指していた「プレイヤーとして活躍する」という夢を手放すことになるので、すぐには割り切れませんでした。「まだ諦めきれない」という中途半端な時期は確かにありましたね。

一方で、グループの中で自分にできることはやり切ったという感覚もあって、「だったら、自分が向いているほうをもっと伸ばしてみよう」と思い、卒業を決めました。卒業後も事務所には所属していたので、すぐに振付師一本になれたわけではなく、表に立つ仕事をしながら、振付の仕事も少しずつやるという期間が2〜3年ほど続きました。

振付師としてやっていけるかという不安よりも、「自分をどう見せていくのか」が定まっていなかったことのほうが苦しかったですね。元アイドルという肩書きを生かして舞台に出演させていただくこともあったのですが、「私は、本当は何がしたいんだろう」とずっと考えていました。演技は、本気でやりたい人たちがたくさんいる世界です。その中で、自分はそこまでの熱量を持てていないこともわかっていたので、「自分がこの場所にいていいのかな」と申し訳ない気持ちになることもありました。だからといって、表に立つ自分を100%捨て切れるわけでもない。その気持ちがずっと残っていて、しばらくはその狭間で葛藤していました。

――そこから「振付師としてやっていこう」と覚悟を決めたきっかけは何かあったのでしょうか。

親戚の叔母に説教されたんです。当時の私は中途半端で、気付かぬうちにきっといろいろと言い訳をしていたんだと思います。それを聞いていて、叔母もイライラしたんでしょうね。その頃は23歳くらいだったと思うのですが、10代を過ぎると、本気で叱ってくれる人って意外と少なくなるじゃないですか。だからこそ、すごく刺さりました。

私は昔から負けず嫌いなので、「そこまで言うなら本気でやってやる!」という気持ちになって。本当に、その一言でスイッチが入った感覚があります。そこから覚悟が決まって、当時の事務所も辞めました。

――まさに人生を変えた一言ですね。

そうですね。私はどちらかというと、褒められるよりも、少し厳しい言葉のほうが響くタイプなんです。そのほうが反骨精神に火がついて、「見返してやろう」「もっと頑張ろう」と思えるんですよね。

以前、学校の先輩に「嫌われるのが怖いんです」と相談したことがあって、そのときも「もうすでに、誰かには嫌われてるから大丈夫だよ」と言われたんです(笑)。言葉だけ聞くとだいぶきつく聞こえるかもしれませんが、もちろんそういう意味ではなくて、「すべての人に好かれるなんて無理なんだから、自分らしくいればいい」ということを伝えてくれたんですよね。

その言葉を聞いてハッとしました。もともとはすごく人に気を遣うタイプだったのですが、それ以来、そういう余計なものが少しずつ剥がれて、本音で話せるようになりました。今でも、あの一言にはすごく感謝しています。

Profile

槙田紗子

槙田紗子

1993年11月10日生まれ、神奈川県出身。2009年、ガールズロックユニット「ぱすぽ☆」のメンバーとしてデビュー。2011年にはメジャーデビューシングル「少女飛行」が女性グループ史上初となるオリコン週間ランキング初登場1位を獲得するなど、アイドルとして活動。2015年のグループ卒業後は、振付師として新たなキャリアをスタート。現在は、FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」、M!LK「好きすぎて滅!」、CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」など、SNS時代を象徴する数々の話題曲の振り付けを担当。“バズるダンス”を生み出す振付師として注目を集めている。

BookShelf

おすすめの書籍

すべては果てしない賭け

すべては果てしない賭け

Amazon

楽天ブックス

紀伊國屋書店

Related

関連記事

Recommend Movies

おすすめの動画

Recommend

おすすめの記事

Tags

おすすめのタグ