〝一流〟を目指して走り続ける、振付師・槙田紗子が描く未来とは

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ダメ出しから生まれた代表作

――今は振付師として活躍されていますが、ご自身の強みや魅力はどんなところにあると思いますか?

私は、バランサーなんだと思います。振付って、作品づくりの中では最後に加わるもの。アーティストがいて、楽曲があって、歌詞があって、メンバーが歌って、その最後に振付が加わって、一つの作品として完成する。だから「ゼロからイチを生み出していてすごいですね」と言っていただくこともあるのですが、自分ではあまりそうは思っていなくて。私がゼロから何かをつくっているというより、すでにあるたくさんの要素を受け取って、それらをどう組み合わせれば一番魅力的に見えるのかを考えている感覚なんです。

ダンスそのものは私がつくりますが、作品全体で見れば、すでに「イチ」どころか、たくさんの魅力がそろっている。その魅力をどう引き出して、どうバランスを取るか。それを感覚的につかむことが、自分の得意なところなのかなと思います。

――その感覚は、生まれ持ったものなのでしょうか。それとも、経験を重ねる中で培われたものですか?

感覚ではあるんですけど、その感覚はものすごくロジックでできていると思っています。例えば、このアーティストは今どれくらいの人気があって、どんな層に支持されているのか。前作がこういう楽曲だったから、次はこういう方向性のほうがいいんじゃないかとか、MVはきっとこういう世界観になるだろうから、振付もそれに合わせたほうがいいとか。そういう情報を頭の中で同時に組み立てながら考えていて、その積み重ねが最後に「これだ」という感覚として降りてくるんです。自分の中では、たくさんの情報や経験をもとに組み立てたロジックの先にある感覚ではありますね。

――今まで手がけた振付の中で、特に印象に残っている作品はありますか?

超ときめき♡宣伝部の楽曲ですね。8〜9年くらい、グループの振付を担当させていただいているのですが、まだ関わり始めたばかりの頃、「すきっ!」という曲で「もっとキャッチーで踊りやすい振付にしてほしい」と全体的な修正が入ったことがあったんです。当時は振付師としてもまだ経験が浅くて、とき宣を担当するのも2曲目くらいだったので、ダメ出しをいただいた瞬間は「もう終わった……」って思いました(笑)。「このまま仕事がなくなるかもしれない」と思うくらい焦って、一から必死に作り直しました。

そうして完成した振付が、後にSNSで大きな話題になったんです。私にとって初めて「バズる」という経験でしたし、とき宣にとっても、ここまで大きく広がったのは初めてのことでした。

ちょうどその頃、コロナ禍が明けてTikTokの文化も変わり始めていた頃で。それまでは、どこから流行ってきたのか分からない音源で踊る動画が多かったのですが、そこからアイドルソングをみんなが踊るという流れが生まれてきて。そのタイミングとも重なって、一気に広がっていったんです。

――アイドルの振付をするうえで、一番意識していることは何ですか?

一番は、ファンの方に喜んでもらえることです。アイドルの振付に関しては、それが絶対ですね。そのために、メンバー一人ひとりのキャラクターや、どんなファンの方が応援しているのかをできるだけ把握するようにしています。SNSを見て、「この子はこういう魅力があって、ファンの人はこういうところが好きなんだな」ということをリサーチするんです。

そのうえで、その期待にストレートに応えることもあれば、あえて少し違う一面を見せて新鮮さを演出することもあります。どちらを選ぶにしても、まずはその子自身やファンの方のことを理解していないと、振付はつくれないと思っています。

振付って、ただ踊りを考える仕事ではなくて、その人の魅力をどう引き出すかを考える仕事だと思っているので、振付を考える前に、その人自身を知ることを一番大切にしています。

――アイドルという存在をずっと近くで見てきた中で、今後のアイドルはどんなふうに変化していくと思いますか?

TikTokの時代も、きっといつかは終わると思うんです。流行は巡るものなので、その先は、もう少し熱量の高いライブをするアイドルが求められる時代になるんじゃないかなと感じています。

私がアイドルをやっていた頃は、今とは少し空気が違っていました。今はビジュアルやSNS映えがすごく重視される時代ですが、当時はライブで前髪が崩れるくらい汗をかいて、お客さんと一緒に熱狂をつくることに価値があったんです。ファンの方もライブハウスで揉みくちゃになりながら夢中で応援していて、その場でしか味わえない熱量があって。だから、またそういう「汗をかいてなんぼ」というような、ライブの熱気やエネルギーを大切にする時代が戻ってくるかもしれないと思っています。ももいろクローバーZさんやBiSHさんのような、全力でぶつかっていくライブが改めて評価される流れは、また来る気がしています。

――なるほど。確かに今は、表情管理も含めてSNSを意識したパフォーマンスが求められていますよね。

そうなんです。今はSNSが前提の時代なので、ライブ中も常に撮影されていますし、「切り取られた映像としてどう見えるか」を意識せざるを得ないですよね。その場でしか味わえない感動を届けるだけでなく、あとから拡散される映像として美しく残ることも求められる。だからアイドル自身も、どうしても動きや表情をコントロールするようになります。

もちろん、それは今の時代に必要なスキルだと思うんです。でも時代は巡るものなので、その反動として、映像では伝わりきらないライブの熱量や、生のエネルギーそのものに価値が置かれる時代が、またやってくるんじゃないかなと思ったりはしますね。

――そうなると、振付のスタイルもまた変わっていきそうですね。今後、挑戦してみたいことはありますか?

まずは、舞台やミュージカルの振付に挑戦してみたいですね。それから、海外でも活動してみたいと思っています。自分のこれまでの経験や強みを生かして、海外で何か新しい価値を生み出せないかを模索したいです。

そのためには、まずは自分自身がもっと学びたいと思っていて、これから海外へ行く予定も少しずつ入れています。LAやニューヨーク、ロンドンなど、エンターテインメントの最前線にある場所へ実際に足を運んで、新しい表現や文化に触れながら、自分の視野を広げていきたいですね。

Profile

槙田紗子

槙田紗子

1993年11月10日生まれ、神奈川県出身。2009年、ガールズロックユニット「ぱすぽ☆」のメンバーとしてデビュー。2011年にはメジャーデビューシングル「少女飛行」が女性グループ史上初となるオリコン週間ランキング初登場1位を獲得するなど、アイドルとして活動。2015年のグループ卒業後は、振付師として新たなキャリアをスタート。現在は、FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」、M!LK「好きすぎて滅!」、CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」など、SNS時代を象徴する数々の話題曲の振り付けを担当。“バズるダンス”を生み出す振付師として注目を集めている。

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