「最後の晩餐はロマン」江國香織×井上荒野×金原ひとみ『最後の晩餐』刊行記念トーク 

―個人的な食の思い出も伺いたいと思います。忘れられない味などありますか。

井上  もう何年も前だけど、長崎で食べた一口餃子かな。夕ご飯の前に軽くおやつみたいな感じで食べるつもりだったのに、すっごく美味しくて、止まんなくなっちゃって。江國さんもいたよね。

江國  美味しかったから十人前追加とかして。人数も多かったし。

井上  もうね、イナゴの大群か!みたいな食べっぷり。

金原  で、食い尽くしたと(笑)。旅先というのも美味しさを引き出しますよね。江國さんが最後に食べるとしたら「旅先でたべる最初のごはん」と書かれてますけど、すごくわかります。

江國  街の中のお店でホットドッグとかハンバーガーとか簡単なものなんだけど、全身に沁みる感じがする。

金原  タイに行ったときがまさにそうでした。フードコートしか食べるところがなくて内心がっかりしていたんですけど、あれこれ見ているうちにテンションは上がるし、独特すぎる支払いのシステムにも外国に来た感を強く感じて、情緒的なものもあったせいか、まさに沁みるなぁと思いながら食べてました。

江國  思い出ではないけれど、私、黒パンが好きなの。だから、ドイツや北欧の国内線の機内食だけはどうしても抗えない。軽食に黒パンが出るの。向こうの黒パンは圧倒的に美味しいから、お腹いっぱいだったとしても食べちゃう。普段、機内食ってめったに食べないのに。

井上  ワインと一緒に?

江國  昼間だから、飲まないかな。

井上  珍しい。ワインで思い出したけど、私の両親はワインをぶどう酒と言ってたの。で、ぶどう酒は酒じゃないっていう認識がなぜかあって。だからなのか子どもの私にも平気で飲め飲めって勧めてきてた。変な家でしょ(笑)。

金原  英才教育ですね、きっと。でも、お酒って家ごとに飲み方がある気もします。あと、その土地だからこの味わいもありますよね。沖縄で久しぶりに泡盛を飲んだときは、こんなに美味しかったっけ?って。沖縄料理ともやっぱりすごく合うので、古酒もかなり進んでしまって(笑)。

井上・江國  沖縄で泡盛かぁ。いいな、いいな。

金原  なので、お土産にもしました。

江國  お酒を買って帰るっていいですよね。お酒の中にその土地の空気が溶け込んでる感じがする。

Profile

江國香織

江國香織

1989年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、92年『きらきらひかる』で紫式部文学賞、99年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、07年『がらくた』で島清恋愛文学賞、10年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文芸賞、12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、15年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞を受賞。他の作品に『ウエハースの椅子』『シェニール織とか黄肉のメロンとか』『ブーズたち鳥たちわたしたち』など。

井上荒野

井上荒野

東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞を受賞しデビュー。2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、08年『切羽へ』で直木賞、11年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、16年『赤へ』で柴田錬三郎賞、18年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞をそれぞれ受賞。他の作品に『もう切るわ』『ベーコン』『キャベツ炒めに捧ぐ』『キャベツ炒めに捧ぐ リターンズ』『リストランテ アモーレ』『あちらにいる鬼』『照子と瑠衣』『そこにはいない男たちについて』などがある。小説の他、絵本の翻訳も手掛けている。

金原ひとみ

金原ひとみ

2003年「蛇にピアス」ですばる文学賞を受賞しデビュー。04年、同作品で芥川賞を受賞。10年『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、20年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、21年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、22年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞、25年『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』 で毎日出版文化賞文学・芸術部門を受賞。他の作品に『アッシュベイビー』『腹を空かせた勇者ども』、『踊り場に立ち尽くす君と日比谷で陽に焼かれる君』エッセイに『パリの砂漠、東京の蜃気楼』などがある。

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