児玉美月|解体されてゆく「母性」と「母親」 【自分らしく生きるための映画紀行 第10回】

『ナイトボーン』の床にあいた穴や『ワンオペレーション』の天井にあいた穴は、家に縛りつけられてしまう母親たちにとって、たんに修復してしまえばいいだけの家の欠陥ではない。それは外界へと繋がる穿孔であり、窮地からの抜け道であり、ときに親和性を覚え、ときに慰めとなる象徴的な空間たりえる。

「母親であること」から生起される恐怖や不安をホラーとして表現するマザーフッドホラーは、いま女性の映画作家の増加によって、ますます豊かな広がりを見せている。そこでは神聖化されてきた「母性」が解体され、どんなときも子供を愛し犠牲を払う「母親」という幻想が揺さぶられる。

物語の最後に子供たちが秘匿されてきたその“顔”をスクリーンにどう現すのか──『ナイトボーン』と『ワンオペレーション』はいずれも、そこに映画の核が結晶化している。

 

『ナイトボーン』

配給:NOROSHI、ギャガ
コピーライト:© 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway
公開日:8月28日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
公式サイト:https://gaga.ne.jp/nightborn_NOROSHI/

 

『ワンオペレーション』

公開日:9 月 18 日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
作品コピーライト:© 2025 Legs Film Rights LLC. All Rights Reserved.
監督・脚本:メアリー・ブロンスタイン
出演:ローズ・バーン、コナン・オブライエン、エイサップ・ロッキー、ダニエル・マク
ドナルド
2025 年/アメリカ/英語/113 分/2.39:1/5.1ch/カラー/原題:If I Had Legs I’d Kick
You/日本語字幕:堀上香/配給:東京テアトル、シンカ

公式サイト: https://synca.jp/oneoperation/

Profile

児玉美月さん

児玉美月

映画批評家。パンフレットや雑誌などに多数寄稿。共著に『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』『反=恋愛映画論──『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで』『「百合映画」完全ガイド』がある。

BookShelf

おすすめの書籍

すべては果てしない賭け

すべては果てしない賭け

Amazon

楽天ブックス

紀伊國屋書店

Related

関連記事

Recommend Movies

おすすめの動画

Recommend

おすすめの記事

Tags

おすすめのタグ