「『ちゃんとしなきゃ』をやめたら、人生も料理もラクになった」爆速レシピクリエイター・およねさんが届けたい、自分を大切にする生き方
「自炊ハードルを地の果てまで下げにいく」を掲げ、の支持を集める・およねさん。仕事、育児、家事に追われる毎日の中でも、「これなら私にもできそう」と思えるレシピが、多くの人の心をつかんでいます。その原点にあったのは、自身も子育てやキャリアに悩み、「幸せになるために頑張っていたはずなのに、幸せじゃない」と立ち止まった経験でした。およねさんの料理に込める思いから、新ブランド「iiyone with」の挑戦まで、お話を伺いました。
急に訪れた夫の適応障害、無職

――およねさんは、もともとキャリア志向だったと聞いています。
そうなんです。私、もともとめちゃくちゃバリキャリ志向で、新卒でベンチャー企業に就職し、夜遅くまで働くような毎日を送っていました。働くことが生きがい、といった感じでした。
――出産がきっかけで退職されたのでしょうか。
そうですね。子どもが生まれてからは仕事と育児の両立が難しくなってしまって、退職することに。その後は、時短勤務で持ち帰りの仕事もない会社に転職したんです。子育てとの両立という意味ではすごく恵まれた環境だったんですが、一方で「このままでいいのかな」「やりがいを感じられないな」という思いもあって……。ちょうどその頃、自宅でできるオンラインの仕事に切り替えたこともあり、自分のペースで働けるようにはなっていたものの、「私はこれから何をしていきたいんだろう」と悩んではいました。
――それがレシピ発信につながったのでしょうか。
大きな転機は、2021年の秋に夫が適応障害と診断され、突然仕事を辞めることになったことですね。夫も無職になり、私も時間に余裕があったので、毎日のように二人で散歩をしていました。まぁ、収入がなくなりお金がなかったので、散歩くらいしかできなかったんですよね。そのとき、「幸せになるために頑張ってきたはずなのに、なんで今、こんなに幸せじゃないんだろうね」という話になって。
その場で答えは出なかったんですけど、一つだけ気づいたことがあって。それは、私たちには「楽しい」と思える時間が圧倒的に足りなかった、ということ。
その気づきをきっかけに、「これからは、自分たちが好きだと思えること、楽しいと思える時間を意識的に増やしていこう」と決めたんです。私は昔から料理が好きだったので、「まずは料理を発信してみよう」と思い立ち、2021年の年末からレシピ投稿を始めました。それが今につながっています。
――最初はInstagramですか?
はい。Instagramと、TikTokで投稿しました。そしたら、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。今まで枯渇していた何かが満たされていくような……。日本酒を「とくとくとく」と注いでいる時のあの気持ちよさを感じたんです。「うわ〜、気持ちいい。なんて幸せなんだ!」と、アドレナリンが出まくった感覚です。
――発信を続ける中で、何が一番楽しいと感じましたか?
レシピを考えることも、撮影することも、全部楽しかったですね。でも一番うれしかったのは、見てくださる方からのリアクションでした。
「おいしそう!」「作ってみたい!」というコメントをたくさんいただくようになって。それまでそんなふうに自分の発信に直接反応をもらう経験がなかったので、すっごく面白かったんです。
実は投稿を始めるときから、「誰に届けるか」はすごく意識していました。届けたい相手は、少し前の私。子育てと仕事と家事に追われて、毎日ヘトヘトになっている35歳前後の女性です。「そんな人が少しでもラクになれるレシピを作ろう」「今日くらいは肩の力を抜いてもいいんだと思ってもらえるような発信にしよう」と決めていました。だから、その方たちから「助かりました」「作ってみました」という声をいただけることが、何よりの喜びでした。
――最初から届けたい相手が明確だったんですね。
そうですね。同じように悩んでいる方の役に立てていると感じられることが、本当にうれしかったです。私自身、子どもを産むまでは、子育てがここまで大変だとは想像していませんでした。自分のために使える時間が、こんなにもなくなるなんて思ってもいなくて。
どうしても子どもが最優先になりますし、「母親なんだから、自分のことは後回しで当然」という空気や、自分自身の思い込みもあったんですよね。
そうして毎日を過ごしているうちに、「私は一体何者なんだろう」「このままでいいのかな」と、自分を見失うような感覚や焦りがどんどん大きくなっていきました。
だからこそ、当時の私と同じような気持ちを抱えている人に、「少しでもラクになれた」「今日のごはんが助かった」と思ってもらえたら、それだけで発信している意味があると感じていました。
Profile
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およね
爆速レシピクリエイター。東京都生まれ、上智大学卒。大学卒業後、介護福祉系ベンチャーで新規事業開発に携わり、事業戦略や採用を経験。結婚・出産後は、教育・福祉領域の上場企業に転職し、“仕事と家庭の両立”を模索しながらキャリアを築く。
2021年12月「自炊ハードルを地の果てまで下げにいく」をモットーにSNSでレシピ発信を開始。等身大の視点が支持され、テレビ・雑誌・WEB出演のほか、企業のレシピ開発・プロモーション支援へと活動の場を広げる。これまで3冊のレシピ本を出版。近著に『“使いきるだけ”でうまくいく 物価高に負けないレシピ事典』(KADOKAWA)がある。
2025年に株式会社レシピラボを設立。2026年には食と暮らしのブランド「iiyone with」を立ち上げ、“暮らしの余白をひろげる”世界観を軸に商品開発と事業づくりを推進している。小学生2人の母。
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