友情結婚も恋愛結婚も、大切なのは「話し合える関係性」

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アメリカにはたくさんいたのに、なぜか日本にいない?

――2015年に「カラーズ」を立ち上げられましたが、なぜこの事業を始めようと思われたのでしょうか?

最初のきっかけは、シンプルに「起業したい」と思ったことです。2013年頃から自分で会社をやりたいという思いがあって、「じゃあ、何をしよう?」と考えたときに行き着いたのが、この事業でした。その背景には、海外で暮らした経験があります。

私は両親の仕事の関係で10代の頃からアメリカに住んでいて、ニューヨークの美大に進学し、卒業後はパタンナーとして働いていました。大学のファッション科にも、ファッション業界にもゲイの方がたくさんいて、身近にいることが当たり前だったんです。大学の学長も、自身がゲイであることをオープンにしてテレビに出演しているような方でした。

ところが日本に帰ってきたら、「あれ、ゲイの人がいない」と思ったんです。もちろん、そんなに大きく割合が違うわけではないはずなのに、「なんでだろう?」と。それで調べてみたら、日本では文化や風潮など、さまざまな理由からカミングアウトをしていない方がたくさんいることを知ったんです。

――カミングアウトをしていない人が、日本では多いということですね。

そうですね。ちょうどその頃、「LGBTQ」という言葉が世の中に広まり始めていたと思います。でも、私自身は「カミングアウトすることが必ずしも正解ではないんじゃないか」と、少し違和感があって。

誰もがカミングアウトしたいわけではないだろうし、日本ならではの“いい塩梅の距離感が生きやすい”という人もいるのでは、と思いました。

――確かにLGBTQの方に限らず、いろんな価値観の方がいるのは当たり前ですよね。

実際に相談に来られる方は男女ともに、会社員や公務員、医者や弁護士、地方で暮らす方まで様々ですが、みなさんごく一般的な社会人として生活されています。セクシュアリティをオープンにするのではなく、「できるだけそっとしておいてほしい」「普通のレールから外れたくない」と思っている人が多いですね。

――そういった方々が一定数いると考えて、事業を始めたということでしょうか。

その前に、まずはたくさんリサーチをしました。いろいろ調べていく中で、「友情結婚」という言葉を見つけました。さらに調べてみると、mixiに友情結婚を希望する人たちのコミュニティがあって、掲示板にもいろいろな書き込みがあったんです。東京では月に何度か、当事者同士が集まるパーティーのようなものも開かれていました。

それを見て、「これだけ需要があるのに、ちゃんとしたサービスがないんだ」と思ったんです。掲示板では相手を探している人がたくさんいるけれど、「実際に結婚までたどり着きました」という声はほとんど見つからなくて。それなら、友情結婚に特化した結婚相談所をやったら需要があるんじゃないか。まだそういったサービスがないのであれば、挑戦する価値はあるなと思いました。

――「結婚相談所」での勤務経験がないなか、どうやって始められたのでしょうか?

まずは、一緒に事業を伴走してくれる仲間が欲しいと思い、友情結婚について発信していたブロガーや、友情結婚の交流サイトを運営している方などに、「結婚相談所をやりたいと思っているのですが、一緒にやりませんか?」とメールを送ったんです。

その中で唯一返信をくれたのが、今も一緒に事業をしているケンです。ケンはカミングアウトをしていないゲイの男性で、自力で友情結婚をしていました。当事者ではないノンケの私によく返信してくれたなと思います(笑)。

でも、彼自身も、同じように悩んでいる人の力になりたいとブログで地道に発信を続けていたんです。でも、カミングアウトをしていないから顔出しはできない。そこにモヤモヤを感じていたみたいで。一方で私は顔を出して発信できる。だから「二人でタッグを組めば、お互いにできないところを補い合える」と思ってくれたようです。

――事業を始められた時、大変だったことや不安だったことはありますか?

「当事者でもない、ただのノンケの私に個人情報を預けてくれるのかな」という不安は、めちゃめちゃありましたね。しかも、最初はまだ何も形になっていないので、当然、会員さんはゼロ。そこで最初の数カ月間は、無料で会員を募ることにしたんです。

入会する際には必ず私と一対一で面談をして、きちんと話を聞いてもらったうえで、入会するかどうかを決めてもらう。それをひたすら続けました。

「こんな状態で、誰が個人情報を預けてくれるんだろう」と思っていたんですけど、実際には「こういうサービスを待っていました」という声をたくさんいただいて。半年くらいかけて50人が集まり、その50人からスタートしました。

――初めて成婚が決まった時はどんな気持ちでしたか?

初めて成婚者が出たのは、事業を始めて1年くらい経った頃です。めちゃめちゃ嬉しかったですね。今でも覚えています。

当時はまだお金もなかったので、個室を借りる余裕もなくて、今も使っているシェアオフィスのオープンスペースだけで仕事をしていたんです。ある日、「そろそろ帰ろうかな」と思っていたときに電話がかかってきて。お二人揃って、「たぶん私たちがカラーズで最初の成婚者になると思うので、電話で報告したくて」と連絡をくれたんですよ。

――それは嬉しいですね。カラーズでは、マッチングした2人をどこまで見届けるんですか?

仕組み自体は、一般的な結婚相談所とほとんど変わりません。入会していただいて、お相手を紹介して、お見合いをセッティングします。一般的な結婚相談所では、その後を「交際期間」と呼びますが、私たちは「話し合い期間」と呼んでいます。

基本は3カ月で、延長して最長半年。その間に二人でしっかり話し合って、結婚する意思が固まれば「成婚」となり、カラーズを退会します。逆に、結婚には至らないとなれば、そこで話し合いを終了します。

ここでいう「成婚」は、入籍することではないんです。一般的な結婚相談所と同じように、二人が結婚の意思を確認して活動を終える「婚約」の段階を指します。成婚退会された後、だいたい3カ月〜半年くらいで入籍する方が多いですね。もちろん、退会後に残念ながら破談になるケースもあります。

Profile

中村光沙

中村光沙

株式会社COLORUS81代表取締役。1985年、徳島県生まれ。中学卒業後、両親とともにアメリカへ移住。ニューヨークのパーソンズ美術大学でデザインを学び、卒業後は現地のパタンナーとしてキャリアをスタート。2010年に帰国後、外資系企業に勤務。日本で働く中で、ニューヨークではLGBTQ当事者がオープンにごく自然に社会に溶け込んで生活しているのに対し、日本ではその姿が見えにくいという現実に衝撃を受ける。そんな折、「友情結婚」という言葉に出会う。2015年に友情結婚専門の結婚相談所「カラーズ」を設立。これまでに4000人以上の相談を受け、400組以上の成婚をサポート。ストレートも登録可能な性的関係のないパートナーと出会えるマッチングアプリ「フレマ」も展開している。著書に『恋愛・セックスはいらない新しい結婚の選択肢 友情結婚』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

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