詩は一人きりで読まなくていい。作家・永井玲衣さんとともに詩にであう【前編|辻征夫、谷川俊太郎】

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数々の名詩人の名詩を選りすぐったハルキ文庫の詩集シリーズ。昨年2025年には『辻征夫詩集』が新しく刊行されたり、この春2026年3月には『石垣りん詩集』が新装版として新たに復活したりと、実は今、詩集シリーズがひそかに盛り上がりを見せています。

そこで今回は、『石垣りん詩集』の新装版解説を務め、以前から詩人や詩のことばを敬愛する作家としても知られる永井玲衣さんにお話を伺いました。インタビューは、以前より永井さんと親交のある、書店兼プロジェクト「Candlelight」主宰のアリサさんが行いました。

永井さんが仲間たちと2026年8月に新しくスタートしたプロジェクト「応答」の活動拠点にて。ここにはいない他者の存在にも思いを至らせながら、詩のことばにであいなおす時間を前編・後編の記事にわけてたっぷりとお届けいたします。


誰かの声をきく勇気と、応答する勇気をゆっくり育む

―― 今日は「応答」プロジェクトの活動拠点「舟(FUNE)」にお招きくださりありがとうございます。まずは「応答」というプロジェクトがどんなものか教えていただきたいです。

これまでは呼ばれたら基本的にどこでも出向いて、対話の場や表現の場をつくってきました。その活動をするなかで、より持続的に、そして特に東京という場所で、人々とききあえる場をつくってみたいなという思いが出てきました。そうして仲間たちと始めたのが、「応答」という対話と表現のプロジェクトです。

「きく」ということから始めてみる対話の場や、演劇や美術などを助けにしながら試みる表現の場などを、さまざまな表現者や仲間たちと一緒につくっています。

―― 東京で、ということにも思いがあったのですね。

東京というのはいわゆる「都市」ですが、そのように都市的生活が主になされている場所では、多くの人がどこか力を奪われているような感覚を持っていると思いました。

忙しすぎるために「自分は何が好きで……」ということすらわからなくなってしまったり、「何かをつくる」「人のことばをきく」などということからも疎外されてしまったりする場所なのだと思います。だからこそ、まずはそういう場所から「応答」という場をつくってみたいと思い、今回は東京にこだわりました。

―― 「応答」がスタートしてから早くも2ヶ月目*ですね。実際に開いてみた感触はいかがですか。

*2026年8月7日に「舟(FUNE)」にて一般の参加者を交えた初めての場を開いた。本インタビューは同年9月24日に「舟(FUNE)」にて実施。

若い人が一人で来てくれることが多くて、そのことは実は意外でした。緊張しながら、でも「やってみよう」という思いを抱いて、足を運んでくださるんです。

今の10代〜20代は、他者との関わりが断絶させられたようなコロナ禍を経ているし、一方でSNSのとんでもない発達もあって、「自分で自分のことばを言ってみる」「誰かの話をゆっくりきく」ということに対する恐怖を感じている人が多いのではないかと思います。

これまでの活動では「このしんどい社会では働くことだけでいっぱいいっぱい」という状態の若い人たちと多く出会ってきたので、こうやって自分で調べてわざわざ出向いてきてくれるということが嬉しく、意外なことだったのかもしれないです。

―― 「自分で自分のことばを言ってみる」ということにも関わると思うのですが、永井さんは「表現」というキーワードも以前から大切にされていますよね。「表現」とはどんなことなのでしょう。

そうですね。「表現」というと、この社会では「発信しましょう」「言語化しましょう」「うまく言いましょう」みたいなことが要請されがちなのですが……。そうじゃなくて、「きく」ということから始めたいと思ってまさに名付けたのが「応答≒レスポンス」でした。

きくことから始められる身振りとしての「応答」にすごく惹かれています。私たちは何か一つ聞いたら応答してしまうんです。「無力だし、人になんて何も言えない」となりがちだけれど、そうじゃなくて、きくとやっぱり何かが自分の中で生まれてしまう。たとえ上手くいかなくても、何かしらの仕方で応答しようとする勇気みたいなものを、もっとみんなで育みたいです。

そして、そこにはもちろん「表現」というものが関わっていると思います。「応答」のプロジェクトメンバーでアーティストの磯崎未菜さんが、「表現するっていうのはちゃんと自分で責任を取ろうとできることだ」と教えてくれたことがあって、いいなぁと思いました。

もう応答しちゃった、表現しちゃった、つくれてしまった。そのことに対して、「これ、私が確かにしたな」って引き受ける勇気のことだと思うんですよね。こうやって言うと、のしかかってくる嫌な責任みたいに聞こえてしまうかもしれないのですが……。でも、一方的に押し付けられるものとは全然違う、主体性の回復ということなんだと思います。

「人の話をきいた」っていうその確かさや、ちゃんと手触りのある手応えみたいなものと「表現」が結びついているという直感を持っています。

Profile

永井玲衣

永井玲衣

人びとと考えあい、ききあう場を各地でひらく。門前仲町を拠点とする対話と表現のプロジェクト「応答」、Gotch主催のムーブメントD2021などでも活動。著書に『水中の哲学者たち』(晶文社)『世界の適切な保存』(講談社)『さみしくてごめん』(大和書房)『これがそうなのか』(集英社)八木咲との共著『せんそうって』(講談社)。第17回「わたくし、つまりNobody賞」受賞。詩と植物園と念入りな散歩が好き。

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