友情結婚も恋愛結婚も、大切なのは「話し合える関係性」
日本で初めて、性的な関係を伴わない“友情結婚”専門の結婚相談所「カラーズ」を2015年に立ち上げた中村光沙さん。中村さん自身は“ノンケ”であり、当事者ではないにもかかわらず、なぜこの事業を始めたのでしょうか。 その原点にあったのは、シンプルに“ビジネスとしての可能性”でした。
お話を聞いていくと見えてきたのは、「友情結婚」を望む人たちの存在と、一言では括れない結婚やパートナーシップのかたち。これまで何千人もの声に耳を傾けてきた中村さんに、友情結婚のリアルから、結婚や恋愛に対する考え方まで、たっぷりと伺いました。
セクシュアリティを理由に結婚を諦めないでほしい

――「友情結婚」とは、どういったものなのか、改めて教えていただけますでしょうか。
「友情結婚」とは、“夫婦間に性的な関係を持たない結婚”のことです。一般的な結婚(恋愛結婚)との違いは、実はそこぐらいなんです。では、どういった方が友情結婚を望んでいるのかというと、異性と性的な関係を持てない、あるいは持ちたくない方たち。つまり、セクシュアルマイノリティの方たちですね。「カラーズ」にご相談に来られる方は、男性だとゲイ、女性だとアセクシュアルやノンセクシュアル(他者に対して性的欲求を抱かない)方が比較的多いです。ただ、言葉としての定義はあっても、セクシュアリティの感覚やグラデーションは人それぞれです。共通しているのは、「異性と結婚して家庭を築きたいけれど、性的関係を持つのは難しい」という思い。そうした方たちが「友情結婚」という選択肢を知って、私たちのところへ来られる感じです。
――女性の同性愛者で、相談者はいらっしゃらないのでしょうか?
設立当初は、ゲイとレズビアンのマッチングが多いと予想していたのですが、女性の9割がアセクシュアルやノンセクシュアルの方々でした。それゆえ、「カラーズ」ではゲイの男性と、ノンセクシュアルもしくはアセクシュアルの女性のマッチングがほとんどで、対象外ということではないです。
――入会条件としてはどんなことがありますか?
まずは、20歳以上で日本国籍をお持ちであること。そして、年収200万円以上の安定した収入があり、経済的に自立していることが条件となります。そして、「結婚相手に性的な関係を求めません」と言える方です。“ストレート”と自認している方は、基本的にお断りしています。
例えば、「これまでは恋人もいたし、性的な関係もあったけれど、30歳を過ぎてから興味がなくなった」という方は対象外です。そういった方には、入会相談の際に「それはセクシュアリティではなく、年齢などによる一時的な変化ではないですか?」と、はっきりお伝えしています。

――なるほど。性的な関係を求めないことが「友情結婚」ならではの条件ですね。事業を立ち上げて10年以上経ちますが、現在はどれくらいの人数の方がご成婚されているのでしょうか?
うちは成婚率が45.1%(取材時)を超えていて、2.2.人に1人がご成婚されています。一般的な結婚相談所では1割程度が平均と言われているので、それと比べても高いですね。
友情結婚の場合、恋愛感情に左右されない分、「人としてどうか」を冷静に見ることができるんですよ。この人と何十年も一緒に生活できるか、家庭を一緒に運営していけるか、という視点でフラットに相手を見ることができます。恋愛特有の駆け引きみたいなものもあまりないので、条件や人柄が合えば、結構スムーズに進みます。面倒な恋愛をしなくていい、というのもありますね。
――自然と恋愛して結婚するのが良いとも限らないということですね。
むしろ、恋愛結婚の方が離婚率は上がりますね。もちろん、うまくいくケースもたくさんありますが、恋愛って、生物学的にいうと子孫を繁栄させるために男女を引き合わせる「脳のバグ」みたいなものなんですよ。そうじゃないと、人と人ってなかなか強烈に惹かれ合わないので。
――脳のバグ……。なるほど。
恋愛をすると、ドーパミンがドバドバ出て、その人のことを好きになるわけです。そうなると、年収がいくらとか、貯金がいくらとか、性格がどうとか、そういう条件は関係なく「この人が好き!」となっちゃうんですよ。「3年目の浮気」とよく言いますが、恋愛感情というものは3年で落ち着いてしまうことがほとんど。実際に、3年以内の離婚が多いというデータも出ています。
――「友情結婚」とは少しズレてしまいますが、結婚相手を探すにはどうすればうまくいくものでしょうか。
結婚って、幸せにもなるし、不幸にもなるものなのに、みんな意外と結婚にはお金も時間もかけないんですよね。一生を共にする相手なのに。大学受験や就職だったら、みなさんお金をかけて準備して、いろいろな選択肢の中から自分に合うところを選ぶじゃないですか。それなのに、人生の大きな選択のひとつである結婚になると、「好きだから」という理由だけで相手を選んでしまう。
もちろん恋愛感情も大切ですが、家庭って結局は生活。だから結婚相手を選ぶなら、恋愛感情だけではなく、生活を一緒にやっていける相手なのか、条件や価値観が合っているのかをきちんと見ることがすごく大切だと思います。
――中村さん自身も、ご結婚はされていますよね?
はい。私はこの事業を始めたからこそ、結婚できたと思っています。この事業を始める前までは、実は結婚に興味がなかったんですよ。
――そうなんですね! なぜ、「結婚しよう」と思うようになったんですか?
昔から「バリバリ仕事をしたい」というタイプだったので、「結婚したら足かせになる」くらいに思っていました。29歳でこの事業を立ち上げて、さまざまな女性と話すようになったのですが、「仕事が好き」「一人でも生きていける」という方もたくさんいらっしゃいました。それでも、結婚に興味を持ち始めたり、子どもが欲しいと思うようになったりされる方々の意識の変化を聞いているうちに、「これだけ自立している人たちでも結婚を考えるなら、私も一度向き合ってみよう」と思ったんです。
――婚活されたんですか?
婚活という婚活はしていないのですが、私は一人で飲みに行くことが多いので、行きつけのお店で「今から結婚相手を探す!」って、みんなに言い回っていたんですよ(笑)。そうしたら常連さんの一人を、まわりから「この人、いいんじゃない?」と勧められて。とりあえずデートしてみて、そのまま付き合って結婚しました。恋愛で盛り上がって結婚したというより、話し合いをたくさんして、お互いの意思を確認しながら決めた感じです。ある意味、結婚相談所っぽいですよね(笑)。
――結婚が前提の付き合いだからこそ、話し合えるのはあるかもしれないですね。結婚されて、どうですか?
2017年に結婚し、現在は子どもも2人いて、とても上手くいっていると思っています。大事なのはやはり、コミュニケーションですね。私は夫と定期的に話し合っています。これは友情結婚に限らず、結婚に必要なことだと思っています。なので、「話し合いができる相手」を選ぶことはとても大切なことだと感じています。
Profile
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中村光沙
株式会社COLORUS81代表取締役。1985年、徳島県生まれ。中学卒業後、両親とともにアメリカへ移住。ニューヨークのパーソンズ美術大学でデザインを学び、卒業後は現地のパタンナーとしてキャリアをスタート。2010年に帰国後、外資系企業に勤務。日本で働く中で、ニューヨークではLGBTQ当事者がオープンにごく自然に社会に溶け込んで生活しているのに対し、日本ではその姿が見えにくいという現実に衝撃を受ける。そんな折、「友情結婚」という言葉に出会う。2015年に友情結婚専門の結婚相談所「カラーズ」を設立。これまでに4000人以上の相談を受け、400組以上の成婚をサポート。ストレートも登録可能な性的関係のないパートナーと出会えるマッチングアプリ「フレマ」も展開している。著書に『恋愛・セックスはいらない新しい結婚の選択肢 友情結婚』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。
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