りな日記 vol.9

8月4日(火)

 朝の3時半にセットしたアラームは家族のためのものだったけれど、そのまま私も起きてしまった。朝ごはんを食べ、身支度をする家族の横で、昨日あまりにも早く寝てしまったその一瞬で一気に溜まってしまった自分の仕事をこなしたり、本棚から溢れている本を片付けたり。家族を見送った後もなんだか眠れず、布団には帰らずそのまま起きてみることにした。

 ルーフバルコニーに出ると、空は綺麗に晴れていた。夏の朝の光。12年前の同じ朝を思い出す。新卒の頃はよくこの時間に自転車を漕いで会社に向かっていた。同じ時間に出社する同僚より少しだけ早く会社に着いて、スタッフルームや屋上から独り占めする東京の朝の光が大好きだった。

 バルコニーで育てているスペアミントに目をやると、少しだけ葉が混みあっている。はさみを持ってきてちょきちょきと剪定してやると、その作業に癒されている自分を空の上から見ているような不思議な気持ち。

 小さな竹のざるがあっという間にミントでいっぱいになったので、いくつかはミントティーに、いくつかはお風呂に入れることにした。朝に聞く「お風呂が沸きました」は清々しい。明るいうちに入るお風呂って大好き。摘みたてのミントは湯船の中でよく香り、鼻から入って身体中に行き渡り、私の一部になってくれた。

 

8月9日(日)

 浅草で開催されていたブックマーケットへ車で向かう。助手席で食べるおにぎりはいつもおいしい。今日もなんだかじんわり暑い。

 知らなかった出版社さんのブースでアラブ料理の本を買った。版元のおじさまが「その本は意外と簡単に作れるものばかり載ってるんですよ」と教えてくれて、その一言が買う決め手になった。何気ない言葉だけど、そこに誠実さがあったような気がして。

 近くにあったタリーズで休憩がてら、買った本を眺める。餃子のヨーグルト煮、キャベツのマハシー、パセリとブルグルのサラダなど、知らない料理がてんこもり。この夏ひとつは作ってみよう。

 

文・写真:佐々木里菜

Profile

佐々木里菜

佐々木里菜

写真家。1991年宮城県仙台市生まれ。スタジオ勤務や写真家の弟子を経て2019年より商業写真家として活動する傍ら、2020年より日記を中心とした文筆活動を細々と行う。主な著作に『ロイヤル日記』(2024年)、『料理未満日記』(2024年)、『近く訪れる彗星』(2025年)など。夜の散歩と植物と疲れている日にわざわざつくる料理が好き。

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