児玉美月|「いいこ」であるクィアたち【自分らしく生きるための映画紀行 第5回】
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「若い女性であること自体がホラー」
『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』は、ユダヤ教における喪の期間“シヴァ”のたった一日を描く。大学の卒業を控えたダニエルは、金銭的な援助をしてもらっている交際相手の男性 “シュガーダディー”と親戚が一堂に会するシヴァの場でばったり鉢合わせてしまう。さらにバイセクシュアルであるダニエルは、同性の元恋人マヤが参加していることに気づく。ほかにもパッとしない進路など、ダニエルはままならない生活のなかで触れてほしくないことばかり抱えているが、その儀式で無遠慮な質問攻めに遭ってしまう。
監督のエマ・セリグマンは、この映画に際して「若い女性であること自体がホラー」なのだと表現している。広角レンズを効果的に使用した映像は、若干の歪みを帯びており、ホラー映画の雰囲気が醸成されている。被写界深度は浅くされ、ダニエルを囲む親戚たちにピントが合っていないのも、現実を直視したくない彼女の心象風景そのもののように見える。十分に痩せていて美しくいなければいけない、立派なパートナーと結婚して子供を設けなければならない……『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』はワンシチュエーションの映画ながら、そこには女性が生きるうえでの、さまざまなプレッシャーが詰め込まれている。

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かつてセリグマンは、高校生たちが女子だけのファイトクラブを立ち上げる『ボトムス 最底で最強?な私たち』をまだまだ数少ないポジティブで楽しく、下品なクィアのコメディ映画として世に送り出した。自身も性的マイノリティであることを公言しているセリグマンは、バイセクシュアルやパンセクシュアルをスクリーンで観られる機会は多くないという前提のもと、クィアベイティングに陥ってしまいたくなかったため、互いに意味深に見つめ合ったり、かろうじて手が触れ合ったりするだけでなく、ふたりの関係を肉体的にも表現したかったと語っている。実際、『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』はマヤとダニエルの女性同士の関係が「友情」ではなく「恋愛」として観客に伝わるようなニュアンスを与えられている。

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