りな日記 vol.14

10/10(土)

車の助手席でどら焼きを食べた。食べかけのどら焼きの断面に秋の光がピリリと反射して、それがよいスパイスとなっていた。視覚情報は少なからず味に影響する。皮が厚くないどら焼きが好き。

 

10/18(日)

今日出先で立ち寄った書店すべてに私の本が並んでいた。「さすがにここには無いだろう」と思った書店も在庫検索をかけると「在庫あり」となっており、店内をくまなく探したら意外な棚で見つかる、ということが続いた。有楽町から丸の内まで歩いたところで急にお腹が痛くなり、歩けなくなった。顔面蒼白でシティベーカリーに駆け込み、なぜかサワークリームのアップルパイを食べ、冷や汗をかきながら乗った帰りの電車の中で気絶した。電車から降りて改札を通過した瞬間、最寄り駅から家までの道のりがいつもより果てしなく感じられた。とびきり嬉しいはずの出来事を「嬉しい」という感情だけで捉えられないのはいつも、私の脳の悪い癖。

 

10/19(月)

机の上にあったお菓子をたくさん食べ、メールをたくさん返し続けたらあっという間に時間が過ぎていた。週明けっていつもそう。アイスコーヒーにミルクを入れて2杯飲んだ。昼に食べた牛丼が夕方になってもずしりとお腹に残っていたので長い川沿いを歩いてみたけれど、重さは消えずに残り続けていた。

眠る前、窓際に置いた多肉植物に小さな花が咲いていることに気付く。「秋映え」という名前が付けられているその植物は、去年の1月に撮影でご一緒した方からいただいたもの。人からいただいた植物を育てるのは少し緊張する。けれど、きれいな花を見せてくれるとほっとする。それは植物が自分のことを認めてくれた証のような気がするからかもしれない。咲いたのは、小さくて繊細なオレンジ色の花。人間は身体に花を咲かせることはできないから、私はあなたのことがうらやましい。

 

文・写真:佐々木里菜

Profile

佐々木里菜

佐々木里菜

写真家。1991年宮城県仙台市生まれ。スタジオ勤務や写真家の弟子を経て2019年より商業写真家として活動する傍ら、2020年より日記を中心とした文筆活動を細々と行う。主な著作に『ロイヤル日記』(2024年)、『料理未満日記』(2024年)、『近く訪れる彗星』(2025年)など。夜の散歩と植物と疲れている日にわざわざつくる料理が好き。

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