「美味しいの原点を探して」幸後綿衣|vol.1 天然のじゅんさいを求めて(秋田県)
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究極の一貫をつくるために、何ができるのか。
その問いに向き合い続けるように、幸後 綿衣(こうご めい)さんは産地へと足を運びます。
食材を“使う”だけではなく、人や食材、土地と“関係を結ぶ”ために。
その探求の旅は、いまも続いています。
東京・麻布十番の「鮨 めい乃」を営む綿衣さんは、名店での確かな経験を礎に、2023年11月に独立した女性鮨職人です。
「すし匠」で研鑽を積み、「鮨 あらい」では二番手として個室カウンターを任されるなど、その実力は折り紙付き。いま、注目を集める存在のひとりです。
しかし、トップに立ったいまも、その歩みが止まることはありません。
ときに漁師とともに昆布漁へ赴き、ときに一枚の海苔を求めて海へ。
さらに、器や設えにいたるまで、料理をかたちづくるすべてに、自ら関わり続けています。もはやそのこだわりや想いは“オタク”を超えた“変態級”!?
その一貫・一品に宿るのは、味わいだけではありません。
背景にある風土や、人の手仕事、積み重ねられてきた時間までも。
綿衣さんの鮨は、そうしたすべてを静かに映し出しています。


フランスで痛感した“言語の壁”がきっかけ
今回から始める本コラムでは、そんな綿衣さんの探訪記録をお届けします。
食材探訪の旅が始まった原体験は、実はワーキングホリデーで1年間、フランスに滞在したことがきっかけだったとか。
「それまでは鮨職人として修業をしていたんですけど、正直、辛いしもう辞めようかな……と思ってしまっていて。そんなタイミングで過ごしたフランスでの時間は、自分にとって大きかったですね。もともと食文化が好きだったので、ハーブやワインを学んだりもしたんですが、それ以上に感じたのは、『食はその土地に根ざしている』ということでした。
フランス料理やデザート、ワインもそうですが、やっぱり生まれた場所で味わうからこそ強いんですよね。そう考えると、鮨も日本という土地だからこそ深まるものなんだな、と改めて思いました。

ワインソムリエの資格も持つ綿衣さん。 お店には厳選されたワインがずらりと並んでいる。
一方で、現地ではコミュニケーションの難しさもあって。ワイナリーに行っても、言葉の壁があって、知りたいことを全部聞けるわけではない。そのもどかしさのなかで、ふと気づいたんです。日本にいながら、農家さんや酒蔵にほとんど行ったことがなかったな、と。本当は同じ言語で、もっと深く話を聞ける環境が身近にあるのに、それを活かしてこなかったのはもったいないなと思ったんです。帰国してからは、同じように食材を探求したいという想いを持つ人と出会って、産地に足を運ぶ機会も自然と増えていきました。いま自分がこうして各地を訪ねているのは、あの経験がきっかけになっているんだと思いますね」
食材の背景を知るためなら、地の果てまで
連載スタートにあたり、「いちばん大切にしたいのは、まず食材そのものの魅力をきちんと伝えていくこと」と、綿衣さんは語ってくれました。
「食事をする時、口に入れる食材がどんな環境で育ち、どんな特性を持つのか。そうした背景を知ってもらえたら、という想いがあります。そして、なぜ私自身が産地へ足を運ぶのかというと、自分の店で出すものに対して、常に“正解”を探し続けているからです。海苔一枚や一品のおつまみであっても、自分が本当に出したいと思えるもの、その精度を少しでも高めたい。その想いが、すべての探訪の原点にあります。実際に現地を訪れることで、食材への理解はもちろん、生産者の方々の想いや、その土地の空気にも触れることができます。そうした体験の積み重ねが、一貫の鮨の奥行きをつくっていくのだと感じています。そして何より、生産者の方々の顔が浮かぶんですよね。そして、それを食したお客さんの、“美味しい”という声を伝えることで、生産者の方々は本当に喜んでくれる。そんな幸せや豊かさの循環が、私自身の喜びにもなっています」
また、その土地でのちょっとした出来事や寄り道も、この旅の楽しみのひとつ。
「お酒が大好き!」という綿衣さんの素顔も垣間見られるかもしれません。
食材との出会いに加えて、そんな一コマも交えながら、この連載を通して“究極の一品”に近づいていく過程をお届けしていきます。

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