「なんだこの小娘は、と思った方にこそ読んでほしい」山崎怜奈が約12万字に込めた思い
ラジオパーソナリティやワイドショーのコメンテーターとして活躍の場を広げている山崎怜奈さん。
乃木坂46のOGでありながら、自身の知性と言葉を武器に、独自のキャリアを歩んでいます。そんな彼女が、初の全篇書き下ろしエッセイ『すべては果てしない賭け』を刊行。今回は本の発刊を機に、彼女の胸の内をじっくりと語ってもらいました。
20代前半の痛みや葛藤を、忘れる前に残したかった

――初の全篇書き下ろしという形でエッセイを書こうと思ったきっかけは?
これまで刊行してきた書籍はウェブ連載を単行本化したものだったのですが、今回テーマにしたかったことは自分のペースでいつも以上に丁寧にと思ったので、一気にドーン!と出してみたんです。おかげで自分の“棚卸し”のような一冊になりました。本を読んだ知人から「何万字書いたの?」と尋ねられ、「そういえば、どれぐらい書いたんだろう?」と担当編集さんに確認したら、約12万字だと。
――12万字! 執筆期間はどれくらいかかりましたか?
最初の打ち合わせは2024年の秋頃で、前回の書籍が発売した後に本格的に取り掛かったのですが、当初予定していた2026年春の刊行の予定が間に合わず、「夏は超えたくない!」という一心でなんとか頑張りました。やっぱり半年じゃ書き終わらなかったですね。内省に時間がかかりました。
――さまざまなメディアがある中で、書籍として残そうと選んだ理由は?
ラジオやテレビからの情報は風化しがちですが、紙で出す意味って、まさに「残る」ところにあると常々思っていまして。今回の本には私の幼少期の育てられ方、受験の話、仕事と学業を両立させてきた話なども含まれているのですが、これらのエピソードは単発でお話させていただく機会がとても多かったんですね。興味を持っていただけるということは、私だけでなく誰かにとっても役に立つ経験なのかもしれない。それならば、忘れる前にしっかりまとめておきたいと思ったんです。あと、“喉元過ぎれば熱さを忘れる”って言うじゃないですか。いま29歳なんですけど、これから年を重ねていくにつれて、私の性格上、20代前半のしんどかった時期のことって「若かっただけで大したことなかったよね、ハハッ!」って、笑い飛ばしてオシマイにしてしまいそうだな、と(笑)。いまならまだ、あの時感じた痛みとか苦さとか、「もっと器用に生きられたならなぁ」と反省した感情がリアルにあるし、ひとつの財産だとも思っているので、読んでくださった方に「私もそうだったな」と気持ちを重ねてもらったり、誰かの支えになればいいなと思いながら書いていました。
――まさにそういった読後感でした。ちなみに今回、初めて触れたテーマはありますか?
乃木坂46に在籍していた時代の話は、独立して以来、自分からは積極的には話してきませんでした。それは思い出に蓋をしていたわけではなくて、現役で頑張っているみんなに万が一でも迷惑をかけたくなかったし、グループに甘え続けてしまうと思っていたからなんです。私にとってはいつまでも大切な思い出ですから、これも忘れないうちに書いておきたかった。昔から応援してくださった方にも喜んでもらえたら嬉しいです。あと、最近私のことを知った方の中には、グループ活動をしていたことを知らない方も増えてきているんです。番組で共演した芸人さんに「乃木坂46にいたことを知らなかった」と言われたり(笑)。「何者なのか分かりづらい」と言われることも多くて。まあ、それは自分で特定の肩書きを名乗ろうとしていないからなのですが……。
臆病だからこそ、自分の居場所をいくつも持っておく

――グループ卒業から新たな分野に飛び出したときの経緯や心境が綴られた「肩書きに縛られない生き方」という章が印象的でした。
縛られないように生きている……というよりは、やりたいことをやれるだけ色々とやっていったら肩書きがよくわからなくなった、という言い方のほうがが正しいかもしれませんね(笑)。
――「ない椅子を作りにいく」開拓精神と、自分を自由にできる「等身大でいられる場所」を見つけること、同時に持つ大切さが伝わりました。
何かひとつのことにのめり込むより、私は自分の“居場所”をたくさん持つほうが精神的なバランスが取れることに気づいたんです。アイドルやりながら学業も続ける。ラジオの帯番組をやりながらエッセイも書くし、テレビタレントみたいなこともするし、報道番組のコメンテーターもする。そのほうが自分のpH値が保たれると言いますか、健やかでいられるんです。ひたすらスケジュールに追われることになりますが(笑)、体が効くうちは続けていきたいですね。
――その行動力、好奇心の強さは羨ましいです。
開拓精神とおっしゃっていただけましたが、無鉄砲なだけなんです(笑)。たまたま自分が好きで興味を持った道が、他の人があまり通ってこなかった道だったりして。「整備されていないのなら、自分で掘るしかないか……」みたいな。本にも書きましたが、幼少期の自分を振り返ると、本来は守られた場所で静かに生きていきたいタイプだと思うんです。でも、その臆病さを好奇心が上回ってしまって(笑)。いまも楽観的な性格ではないんですよ。「どうにかなるさ」ではなく「どうにかする!」という精神で生きてきました。
――失敗を恐れて行動を起こせないという方が多いと思います。
10代の頃からトライ&エラーを繰り返してきたので、失敗することに抵抗がないのかも。どうしても自分自身を“商品”として捉えなければいけない仕事なので、私が世の中にリリースされた時、価値を見出してもらうにはどう立ち回ればいいのかを考えながら仕事をしてきたんです。その過程の中で「頑張ったけれど、世の中には刺さらなかった」っていうことはいくつもあり、良くも悪くも自分の気持ちに折り合いをつけることはうまくなっていったのかもしれません。「プラスにはならなかったけど、時間がかかっても最終的にプラマイゼロならいいや」って具合で(笑)。
――本の中にも「向いてないけどやってみた」「適正では測れない人生がきっとある」など、適性検査で進路や計画を決めていくことが推奨されつつある世の中に刺さる言葉がたびたび出てきました。
思い込みや決めつけって、私自身もたくさんあります。だからこそ「とりあえずやってみる」を大事にしているんです。「こんなの絶対に合わないだろうな」って思っていたことが、意外と楽しかったりするんですよ。やってみてエラーを起こしたら、次からは避けられますし!こういう知恵は、小さい頃夢中になったRPG系のゲームから学びました。いろんな面をクリアして、未開拓ゾーンを探しに行く。コンプリートしたら新たなエリアが出てくるので、またクリアにしに行く。こんな感じで世の中のこと、そして自分のことも知っていく。まさに“すべては果てしない賭け”なんです。勝算のない賭けだとしたら、努力あるのみ。諦めが悪いんです(笑)。
決めつけを捨て、人と関わる“余白”になれたら

――この本を読むことで、どんな反応がもらえたら嬉しいですか?
本の帯を書いてくださった声優の花澤香菜さんには、「これだけ怜奈ちゃんとしゃべっていたのに、まだまだ怜奈ちゃんの知らなかったことがいっぱい書いてあってビックリした」と言われたんです。それぐらい他者と理解し合うって、簡単なことではないんですよね。私もラジオでいろんなゲストの方をお迎えして話を聞く時、自分の物差しで相手を決めつけないことをモットーにしているのですが、それは自分が他人に決めつけられたことで傷ついてきたことがあったから。もし「イメージと違う」と感じたら撥ねつけるのではなく、そこから相手へ興味を持ったり、見えない背景を想像してほしい。そうすることで理解が深まると思うんです。逆も然りで、自分が理解されずに生きづらいと感じている方が、人との関わりの中に余白を持つきっかけの一冊になったらいいですね。
――客観的な視点で、この本の感想をまとめるとしたら?
私のことをテレビで見かけて「なんだ、このナマイキな小娘は?」と思ったことのある方にこそ、手に取って読んでいただきたいです(笑)。そのためにはお財布を広げ、貴重なお時間までとらせてしまうという点で大変なお手数をおかけしてしまうのですが、「人はパッと見じゃわからないところもあるんだな」と思っていただけたら幸いです。もちろんカタい話ばかりではなく、バッテリーが切れたらどんな場所でも寝てしまうエピソードや、親戚の集まりで物陰に潜んでいた子供時代の話、「B型ひとりっ子迫害されがち」など、“どうかしているエピソード”もたくさん書いてありますので(笑)、楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
取材・文:瀬尾水穂 撮影:堺優史(MOUSTACHE)
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