りな日記 vol.4

5月19日(火)

 火曜日ってめんどくさい。いつも元気が全然出ない。今日会いたかった友達がいたけれど会いにいく元気も連絡する気力もなくて会えなかった。いつも同じ後悔。会いたかった。朝ごはんに松のやで330円の玉子丼を食べて一度帰宅して仕事して、また家を出て新宿西口のマクドナルドの3階カウンター席の端っこ。この席が空いているといつも嬉しい。席についてPCを開き、ずっと返せていない大事なメールを打とうと頑張るけれどうまく書けない。注文した品は店員さんが席まで届けてくれた。ありがたい。チキンのバーガーとアイスコーヒーSサイズ。いつもこれ。330円。

 窓の外、ヨドバシカメラの看板のふちを鳩が歩いている。飛ばないで、器用に歩く。今日は暑くて、道を歩くみんなは夏の格好。私も半袖短パンだ。すっぴん・メガネ・ベージュのキャップ。寝巻きみたいな格好で街にいても許してくれるのが東京のいいところだとずっと思っている。下ばかり見るのに飽きて上を見ると大きな看板の向こうに小さな空が見えていた。都会にも空はある。小さくて少し狭いけど。

 忙しそうに歩く人々は誰も空を見ていない。目的地の方角、もしくは四角い電話の白い画面を見ている。窓の外を鳩が横切っていった。そういえば鳩も空を見ていない。私以外、誰も空を見ていない。

 唇についたマヨネーズを指で拭うとき、なぜか右手の親指の腹でぬぐう。何かの映画で見た仕草のまね。奥歯に残ったレタスを噛むとシャキシャキ。散歩がてら歩いて帰る。

5月20日(水)

 少し前から鉢植えで育てている青じそが大きくなってきて愛おしい。毎日いろんな角度から眺めちゃう。青じそは朝に起きて夜に眠る。昼と夜とで葉が大袈裟に上下するのでよくわかる。植物も、生き物なんだ。呼吸をしている。生きている。鋏で切って収穫するとき、人間には聞こえない悲鳴をあげていたらどうしよう。そんなことを考える。

 

文・写真:佐々木里菜

Profile

佐々木里菜

佐々木里菜

写真家。1991年宮城県仙台市生まれ。スタジオ勤務や写真家の弟子を経て2019年より商業写真家として活動する傍ら、2020年より日記を中心とした文筆活動を細々と行う。主な著作に『ロイヤル日記』(2024年)、『料理未満日記』(2024年)、『近く訪れる彗星』(2025年)など。夜の散歩と植物と疲れている日にわざわざつくる料理が好き。

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