りな日記 vol.5

6月12日(金)

夕方。用事と用事の間の坂道の下り坂を早歩きしていると古着屋さんの店先でワゴンセールが開催されているのを横目に見つける。「ALL ¥1,000」と書かれた看板の下には小さなワゴンの中に綺麗に畳まれたシャツが並んでいて、その中の1番上にあったシーブルーのシャツを何気なく手に取ると自分の肌にすっと馴染む感覚があった。お店の方に現金で千円札を渡し、シャツを受け取り、坂道を下りながらいま買ったばかりのボタン留めされたシャツを頭から被って身に付け自分のものにした。

RPGゲームのように出先で出会って手に入れたものをその場で身につけて歩くのが昔から好き。今日のシャツは男性物だけどなぜか私によく馴染む。左腕の袖部分にさりげなく刺繍された小さなヤシの木がお気に入り。

帰宅すると昨日の夜中に衝動買いした腕時計が届いていた。「一般的なお父さんが身に着けている腕時計」みたいな見た目に惹かれて買ったチープカシオ。パパの真似事。今日買ったシャツにたまたまよく似合っていた。嬉しくてすぐに身につけて夜の散歩。スマートフォンを取り出さずに時刻が分かることの便利さを享受する2026年6月の第2金曜日。

 

6月13日(土)

作業に行き詰まりもんもんとしている時、なぜかいつも水回りの掃除がしたくなる。今日は久々にその発作が起きた。洗面所やキッチンを一通り綺麗にしても気が収まらず、家の中で1番大きな水回りはなんだろう? と考えた時に頭に浮かんだのはルーフバルコニーだった。私が上京して最初に住んだ狭い部屋くらいの広さがあるルーフバルコニー。魔女の宅急便のキキみたいにデッキブラシでゴシゴシと掃除をしたくなり、近所のホームセンターまで歩いてデッキブラシを買いに行く。

帰ってきてすぐに掃除開始。夕暮れにこの場所を掃除するのってこんなに気持ちがいいんだ。バルコニーに放ったバケツの水はすぐに広がり、小さな海みたいになって、そこに西陽が反射していた。もうすぐ夏至。夏が来る。

 

文・写真:佐々木里菜

Profile

佐々木里菜

佐々木里菜

写真家。1991年宮城県仙台市生まれ。スタジオ勤務や写真家の弟子を経て2019年より商業写真家として活動する傍ら、2020年より日記を中心とした文筆活動を細々と行う。主な著作に『ロイヤル日記』(2024年)、『料理未満日記』(2024年)、『近く訪れる彗星』(2025年)など。夜の散歩と植物と疲れている日にわざわざつくる料理が好き。

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